家具は何かの記念にお造りになることが多いようです。
この度のクライアント様は新居でお使いになる座卓のご依頼でした。
制作途中何度もお見えになりました、お話しすると塗装にも造詣が深くていらっしゃるご様子。
「ご一緒に塗装しませんか?」とお誘いしました。
家具の塗装と言うと既製品は「ポリウレタン塗装」がほとんどだと思います。
これは車の塗装と同じで、ラップをするように家具の表面を薄いフィルムで覆ってしまう塗装方法です。
近年非常に優秀な性能を発揮しておりますが、所詮工業製品です。
家具の完成時が100点とすると、経年と共に徐々に劣化が始まり、最後は崩壊に向かいます。
すり減り剥がれた塗装面から汚れが目立ち、大ごみとして捨てられる運命となります。
木部は大丈夫でも塗装で寿命が決まるのです。
メーカーは何年かの後の買い替え予想に基づいて可使用年月を想定して商品開発をします。
百年長持ちしてしまったら困るのです。ベニヤ板もしかり。
私は「オイルフィニッシュ」と言う塗装法を採用しています。
表面塗膜を造らないことでダイレクトに木肌に触れることが出来、適度な手ずれにより、家具に深い時間が刻まれるような塗装を施します。
オイルと言ってもさまざまにありますが、食卓として使う日常使いを勘案して、使用するオイルと塗装方法を決めます。(例、リボス・アウロ・オスモ・ワトコ・ワシン・キャピタルペイント、アトリエベルなどなど)
「器物百年を経て精霊を宿す」と言う言葉があります。
お寺の柱や廊下のように、長い年月を人の手が育てて行くことで艶を増し、風情を醸してゆけるものが木であり家具なのだと思っています。
家具には科学的に丈夫な皮膜をかぶせる事が良いとは思っていないのです。
科学の実験室では無いのですから。
生地仕上げに番手の高いサンドペーパーも使いません。
素人さんは磨いてしまいますけど私はマットに仕上げます。
使う方が艶を造ってゆくことを楽しんでいただける余地を残しています。
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